2016年1月27日水曜日

杭データ偽装と販売したデベロッパーの責任 購入者が急ぐべき瑕疵担保請求

昨夜の夜にマンション業界に激震が走りました。横浜のマンションが傾いた問題で、下請け建設会社が施工データの偽装を認めました。

約2㎝低くなっている渡り廊下の手すり

(写真は横浜市建築安全課が公開したもの)

不動産業界の信用を揺るがす大事件に区分所有者が取れる対応


横浜のマンションの完成は2007年です。住民が渡り廊下の異変に気付き、販売会社に連絡したところ、当初は『東日本大震災が原因だ』という説明を受けたらしいです。

また、販売会社側は杭の施工不良が明らかとなった現在でも『震度7の地震に対する安全の検証を行った結果、安全は確保されている』と説明しているようです。これは時間稼ぎです。区分所有者は自らの財産を守る為に、やるべきことをやらねばなりません。

瑕疵担保責任の有効期間は引渡しから10年、知ってから1年


瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)とはマンション購入などの有償契約でその目的物(今回はマンション)に隠れた瑕疵(購入の時点で明らかになっていない欠陥)があった場合に売主が買主に対して負う責任です。

売主の責任は無過失責任です。売主に責任が無くてもその責任を負うということです。

この責任は原則として無期限です。買主は瑕疵を知ってから1年以内に請求すればいいんです。一方で売主に過失が無くても負うので過大な負担となってしまいます。

そこで売買契約に特約を設けてその期間を短縮したりするんですが、新築住宅の場合は、住宅品質確保法(94〜97条)によって10年よりも短い期間には出来ないことになっています。

つまり、2007年に完成引渡しを受けたこのマンションはまだ10年経過していないので、瑕疵担保責任を追及できる状態です。

これは不幸中の幸いです。

買主が追及できる権利は二つ

  1. 損害賠償請求
  2. 契約の解除=返品返金

今ならまだマンションを返品して払ったお金を返して貰える可能性があります。

瑕疵を知ってから1年の時間切れに注意!一刻も早く専門家に相談を


現在、売主は住民との話し合いということで、様々な手を打っていると思います。

時間稼ぎです。

あくまで法律的な手続きで瑕疵担保責任を請求しないと、知ってから1年という期間はアッという間に過ぎてしまいます。

管理組合として、三井側と交渉するにあたっては、一刻も早く法律の専門家に相談し、代理人を立てて交渉するべきです。

仮に過失を知った時点を手すりのズレに気づいた2014年11月とされてしまうと、残りは1か月ということになります。


契約を解除出来る可能性


区分所有者としては、調査・補修などより『もう契約を解除したい』という気持ちが強いのではないでしょうか。
契約解除出来る可能性について、検討してみます。


契約解除はその欠陥によって目的を達成出来ない場合のみ


契約が解除は、そのマンションの欠陥によって住宅としての目的を達成出来ない場合のみ認められます。

住宅としての目的=住む目的ですね。

そこに住み続けることが危険であり、住み続けるのが不可能だと裁判所が認めれば契約解除=返品返金となります。もちろん別途、損害賠償請求も認められます。


契約解除は販売会社が最も恐れる結末


これは販売会社にとっては何よりも避けなければならないポイントだと考えているようです。

ここだけは死守したい。

それが現れているのが、販売会社のこのコメントです。再度書きます。

『震度7の地震に対する安全の検証を行った結果、安全は確保されている』


いつの間にこんな検証をやったんでしょうか?
どんな検証をしたんでしょうか?

マスコミに聞かれても『係争中なので』『話し合い中なので』と言えば答えなくても済む質問です。

とりあえず、そういう主張をしておかないと、区分所有者から『住宅としての目的を達成出来ない』と訴えられた時に反論出来なくなるからです。

下記は販売会社のコメントです。
『お住まいのお客様には当社が誠意を持って対応させていただきます』
では、責任を取るつもりはあるのか?

どうでしょうか。

その後の報道で、三井不動産レジデンシャルは社長自ら住民に謝罪し、以下を約束したことが報じられました。


  1. 全棟建替えを基本的枠組みとした対応
  2. 代替住居、宿泊ホテル等の費用負担
  3. 精神的損害への補償


この件についてはソフトランディングしそうですね。

これから旭化成建材が担当したマンションで同様の施工データの改ざんが行われていないか徹底的に調査されるでしょう。


  • どこまで被害が広がるか?
  • どこまで補償されるか?


予断を許さない状況ですね。

住民が建設会社の責任を訴える場合は不法行為責任


建設会社とマンションの買主の間に直接の契約はありません。買主がこの瑕疵担保責任を追及出来るのは、直接の売主のみです。

住民が原因を作ったとされる建設会社を訴えるには、不法行為責任の追及となります。

不法行為責任を追及する場合、加害者(被告)である建設会社の過失を被害者(原告)である買主が立証しなければなりません。

不法行為責任の追及は瑕疵担保責任の追及よりもハードルが高いのです。

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