データ改ざんの手口と動機から考えるこれからのマンション市場
ここ数日はゼネコンA社の施工データ改ざんの話題で持ちきりですね。今回は、ゼネコンの施工担当者が行った改ざんの手口とその動機、これからのマンション市場について書きます。
- なぜこんな事になったのか?
- 消費者はこれからどうすれば良いのか?
現行の工事監理の限界=工事施工者の悪意を想定していない
マンションの建築工事では設計指図書の通りに工事が行われているか、第三者的な立場から工事監理者という立場の一級建築士がチェックする体制になっています。
杭工事ではまず初めに試験杭を打ちます。工事監理者はその現場に立ち会って設計図書通りに施工されているか、下記に挙げるような重要な部分をチェックするんです。
- 材料
- 施工管理状況
- 地質
- 支持地盤
しかし、工事監理者はずっと現場に張り付いて監視してる訳ではありません。
施工業者が試験杭の施工と同じように誠実に施工することを前提としているんですね。
つまり、工事監理者のチェックは施工者に悪意があることを前提としたチェックになっていないんです。
改ざんの手口は極めて単純
ゼネコンA社の社長が現場担当者による改ざんを認めたのは凄く早かったと思いませんでしたか?
マンションの傾きが大々的に報道されて、マンション販売会社の社長が住民に謝罪した、その日に、もう現場担当者によるデータの偽装を認めたんです。
つまり…
- 資料に隠ぺい工作が無く、見ればすぐわかる
- 疑いようがない
こんな状態だったということです。
報道では当初『データを改ざんした』と出てましたので私は電子データとばかり思ってました。
電子データでコピーされたら、なかなか分からないだろうな…
と、思ってましたけど、その後のゼネコンA社の社長の説明では『記録紙が濡れた』というコメントが出て来ました。
え?記録紙?
ということは、電子データではなく、紙のコピーということです。
すぐわかったということは他の杭のデータを印字した記録紙をコピーして、ほとんどそのまま綴じ込んでいた可能性が高いですね。
いずれにせよ、問題があるかもしれないという目で専門家が見れば明らかにコピーだとわかったような手口ということです。
担当者が施工データを改ざんした動機
施工データを偽装したところで、担当者に金銭的な見返りはありません。
報道でも言われていますが、工期を守らなければならないというプレッシャーだと私も思います。
このマンションが販売を開始したのは2006年でした。下のグラフにもありますが、首都圏のマンション販売戸数が特に多かった時期の最後の方の時期です。
ちなみに2008年にガクッと落ちてるのは、リーマンショックによるものです。
国土交通省 住宅経済関連データより
マンション新規販売戸数の推移
この時期は、デベロッパーからの工期への圧力が高かったと言われてますね。このグラフを見ると、2006年以前もかなりのプレッシャーがあったのではないかと思います。
今後は、工期を守るということが、施工不良の動機になり得るという前提を置かない訳にはいかなくなるでしょう。
今後のマンション市場は冷え込むが、購入希望者にとっては好機でもある
当然、今回のこの事件を見て『やっぱりマンションを買うのは恐いな』と思った人が多いと思います。
聞いた訳ではないですけど、契約件数はガクッと落ちたでしょうね。
ということは…ヤラシイ話ですけど
新築マンションの値引き交渉を有利に運ぶチャンスとも言えます
多くの人が様子見に入るので『買い手市場』になるんです。良い物件を安く手に入れるチャンスです。
同時に
- 既にマンション建築ペースは落ち着いている
- 施工者、監理者、マンションデベともに過敏な程に注意している
新築マンションについては、むしろ最も施工不良のリスクが低いタイミングだと言えます。
その逆に、供給のピーク時に建設された中古マンションについては、施工不良のリスクについても慎重に考えた方が良いかもしれません。
今後のマンション購入検討者に迫られる選択
マンション販売会社にとっては、まさに今、販売中のマンションが売れないということは次のマンションを建設する為のキャッシュの流れがストップすることです。
やらしい話ですが、間違いなく購入検討者にとってのプラス面です。
むろんリスクもありますが、今回の事件は今まで密かに潜在していたリスクが見えただけという考え方もできます。
一方で、たとえ僅かでも施工不良の可能性があるなら購入すべきではないという考え方もあるでしょう。工期のプレッシャーは健全な経済活動で通常発生するものです。これが施工不良の動機になり得るというリスクは、事件そのものが風化しても残り続けるでしょう。
- リスクを許容するならば好機
- リスクを許容しないならば、あくまでマンションの購入はやめるべき
購入検討者はこの決断を迫られる場面になりそうです。
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