2016年2月6日土曜日

M銀行元行員の犯罪 46歳の元課長代理 不正のトライアングルと銀行の罪

銀行員と犯罪

M銀行の元銀行員が横領で逮捕されました。46歳の課長代理の男性です、私とそう歳はかわりません。それで少し検索してみると、M銀行は去年の11月、4月にも横領で逮捕者が出ています。どちらも50代の男性課長です。

加えて前代未聞といえる現職の審査役による巨額投資詐欺事件も発生しました。

銀行員といえば、あまりこういう言い方好きじゃないですが、サラリーマンの中では上の部類に入る人達です。別の言い方をすれば社会的な信用が高い。例えば、独身女性の読者の方が彼氏を親に紹介するときに、比較的両親のウケがいい部類の人たちです。

しかしその銀行から約一年の間に少なくとも3人の犯罪者が出た、という事実をどう見ますか?

当然、銀行が犯罪者ないし犯罪者の要素を持った人を雇用しているのではありません。


彼らは銀行員となってから犯罪者となった

「何を当たり前のことをエラそうに」と思われるかもしれませんが、重要なポイントです。このような言い方もできます。

彼らは銀行員にならなければ、犯罪者にならなかったかもしれない。

最後が「かもしれない」で終わっているのは始めに「銀行員にならなければ」という「if」があるからです。彼らが銀行員でなかった場合にどうなったかまで、私にはわかりません。

銀行員、それもみずほ銀行のようなメガバンクに入行するには真面目に勉強をして、東大とまではいかなくても誰もが知っているような名のある大学に入り、要領よく単位を取り、就職活動もしっかりやったのです。

彼らが銀行員になるまでの人生において『盗む』『騙す』という行為からは実に遠いところにいたはずです。



不正のトライアングル(動機、環境、正当化)

不正のトライアングルという言葉があります。企業の従業員や経営者が横領や不正会計、粉飾決算をする、ある一線を越える時の要素です。

不正のトライアングルはインディアナ大学出身の犯罪学者ドナルド•クレイシィ(1919〜1987)の研究による、1973年に出版された「横領の社会心理に関する研究」の中で提起された理論が発展したものです。

現在は、企業が従業員•経営者による横領、不正会計、粉飾決算などを未然に防止する仕組み(内部統制)を構築する時に利用される考え方です。


横領の動機

彼らが、横領という犯罪に手を染めた『動機』として、ギャンブル(借金)や高級クラブ(女)が本人の証言として報じられています。銀行員は特にギャンブルや女に溺れやすいのでしょうか?ギャンブルや女というのは、銀行員に限らず『男性』に特有の動機であると思います。


横領可能な環境

彼らに共通するのが、『管理職である』である点です。報道では、その立場を利用したような書かれ方をしています。

手口の詳細は分かりませんが、管理職というだけで簡単に預金を引き出せるわけではありません。必ず何人かのチェックの上で行われますし、内部監査も定期的におこなわれているはずです。

むしろ、M銀行の現在の不正防止措置では有効性に欠けるのかもしれません。(かもしれません、というより『そうに違いない』と書きたい位、短期間に不正が頻発し過ぎです)

犯罪者を擁護する意図はありませんが、この点において銀行側の責任は大きいと私は考えます。

『性善説』『性悪説』という言葉があり、しばしば『性善説』はそんな悪い人間はウチの会社にはいないよ、というような耳障りの良い、人道家的な立場からの意見として語られることがあります。しかし「できればカネにならない不正防止などということに時間と労力を使いたくない」という企業側の本音の隠れ蓑として語られていることが多いです。

本当に従業員や顧客のことを思うならば、


  • 大きな企業ほど従業員の『動機』にまで目配りできないこと
  • 人間は元来弱く誰しも不正を働く可能性があること


上記を踏まえて『不正をやろうと思っても極めて困難な仕組み』を(ある程度、コストがかかっても)設定するのが、真に人道的な立場であろうというのが私の考えです。

元来は善良な自分達の仲間を犯罪者にしない為のコストでもあるのです。



横領することの正当化

横領は言うまでもなく、悪いことです。彼らの中でそれを正当化する理由があったということです。例えば、こんなことになったのは銀行(顧客)のせいだ、自分は悪くないorやむをえない。というような身勝手ですが、彼らの背中を押す『事情』です。

彼らの年齢とポストを見ると、銀行への復讐もあったのでは、と思われます。もちろん復讐だとすればお門違いですが、たとえ銀行内で出世出来なかったとしても、最後まで自分の仕事に誇りを持ってもらいたかったと思います。

そして、そのような前向きな風土を形勢するのは経営者の責務であると思います。

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